ネット通販や電子書籍の普及などを背景に全国的に 本屋 が減少するなか、2024年3月、経済産業省が地域の本屋の振興に向けたプロジェクトチームを立ち上げて新たな支援策を検討してくことになったそうです。
経済産業省の目的や今後の方針は次の通り。
- 地域の文化拠点としての役割がある
- 利用客を増やすことができた事例を全国の書店に紹介
- 事業承継の課題の把握
- 同じ問題意識のあるフランスや韓国の事例を参考にする
街の 本屋 は粗利益率23%で儲からない
街の 本屋 が儲からない理由は、 本屋 が本を仕入れるときの一般的な掛け率は77%だからです(定価1000円の本を770円で仕入れる)。
スーパーやドラッグストアは食品の利益率を抑えつつも加工品や医薬品の売り上げで調整して粗利益率が30~40%になるように設計しており、本屋の粗利益率23%は低いといえます。
粗利益率が低いため、売り手市場のいまでは本屋は労働力不足に陥り(給料、時給は低いが仕事は重労働)、経営が厳しくなっている本屋が急増しています。
本屋 の低い粗利益率の原因は業界の特殊ルールにある
出版物には「再販制度(再販売価格維持制度)」と「委託販売制度」があり、この2つの特殊ルールが本屋の低い粗利益率の原因となっています。
この2つの制度は戦後(終戦は1945年)に始ったので、仔細の見直しはあったようですが本筋は70年以上続いていることになります。
「再販制度」によって 本屋 は価格を自由に決められない
本には再販制度があるので、出版社が決めた定価で販売しなければならず、小売店での値引きは認められていません。
私たち消費者にとっては「どこで買っても同じ価格」なので、自宅や近所まで届けてくれるサービスがあるネット通販のほうに利用者が増えるのは自然なことです。
さらに電子書籍は再販制度の対象外なので紙の本よりも安く買うことができ、利便性が高くて安いのだから読書家が電子書籍にシフトするのは自然なことではあると思います。
紙の本は場所をとります。電子書籍を利用するようになって家がスッキリ片付くようになりました。
「委託販売制度」があるから 本屋 は自分で本を選ばない
委託販売制度とは、出版社と本屋との間に入った取次会社が「多分このくらい売れる」と予測して 本屋 に販売してもらう制度です。
委託配本された本や雑誌が売れ残ってしまっても、仕入れた値段で出版社に返品できるのでデッドストックのリスクは減ります。
仕入れた値段で返品できる。
このシステムを知って、 本屋 が利用者数に比べると多い本を平積みできている理由が分かりました。
Web書店は 本屋 として経営している
Amazonは送料無料でも利益が出せているのは、Amazonは本を売る経営をしているからです。
まずAmazonは委託販売制度を使わずに出版社から掛け率60%程度で直接仕入れているそうです。
従来の掛け率77%に比べると出版社の取り分が大分少なくなる感じがしますが、返品リスクと取次の手間がないことは出版社にとって大きなメリットだとか。
さらにAmazonは新品と中古本を同じページに表示。
本は定価で売るというルールを守りながらも、消費者に選択肢を与えることで「本はAmazonで買うのが便利でお得」とアピールしています。
本屋 が何もしなくても儲かった時代を支えたのは「子ども」
経営が上手くいかない理由は「利益率が低い」か「売れない」です。
本屋 の 利益率は昔から低かったので、本屋の経営が上手くいかない理由は「売れない」にあります。
売れない原因とされるのは3つ、
- 出版のデジタル化
- AmazonなどWeb書店の台頭
- 子どもが減った
そもそも利益率が低いのに街の 本屋 が経営できていたのは子ども向け商品が安定収入としてあったからです。
子供向け商品とは、児童書、学習参考書、マンガ、雑誌、そして教科書の売り上げ。
特に教科書は安価で掛け率が高いため1冊の利益は少ないですが数が出る、しかも店に出さずに仕入れたら学校に納めてしまえるため経営的に利益が出やすい。
この薄利多売でやってきた 本屋 の事業を支えてきた子どもが減っています。
子どもの出生数のピークは戦争を経験した子どもが大人になった1973年の209万人、その後は減少しつづけて50年後の2023年の出生数は75万人。
単純計算で顧客数がピーク時の3分の1に減少。
戦後に生まれた事業モデルを続けていたら経営が厳しくなるのは当然です。
【結論】 人気のある本を売るだけの 本屋 はなくなる
ただ人気のある本を売るなら、街の本屋は Amazon に勝てないでしょう。
現状では多売薄利が経営のやりかたなので、過疎化の町ほど本屋はなくなります。
本屋 や出版社などで作られる「出版文化産業振興財団」によると、書店が1つもない自治体は全国のおよそ4分の1あるとか。
調べてみたら私の生まれ故郷はその4分の1でした。
そんな町に住む私の父は本の虫ですが、本屋がなくなっても特に困っていないとか。
父によれば、自分が大学生の頃は経済的に豊かではなかったから古本や大学の図書館をよく使っており、中古本が買えるAmazonは便利だし、過疎化が進んでいるくせに不自然に立派な町の図書館にリクエストたりして街から本屋がなくなっても全く不便をしていないそうです。
いまでは図書館には父のリクエストした本がずらっと並ぶ棚があります。
朝日新聞の広告で見てリクエストした本が多かったからか、同じ新聞を読んで気になっていたという人が本を借りていくそうで図書館側も棚を作ってみたそうです。
ただ人気のある本を集めるのではなく、地域でどんな本に興味を持たれているか調べたり、作家や出版社にこだわらずに「〇〇を読んだ人におすすめ」というような形で本を紹介してみるのもいいのではないかと思います。
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