
「 マダニ が媒介する感染症で二人が亡くなった」
——そのニュースを目にしたのは、ちょうど庭の草むしりを終えた日のことだった。
手には軍手。足元には土の匂い。
そして、この春から我が家の庭によく来る野良猫たちのこと。
一匹の野良猫は子猫を連れている。
ふわふわと無防備な子猫、うちの下の子は「かわいい!」と駆け寄ってしまう。
猫のほうが警戒心と身体能力があるので「触る」とまではいかないが、ふと思う……。
もしあの小さな背中に、 マダニ が潜んでいたら?
今回は子どもが出会う「かわいい」の裏にある注意点を、親として綴ってみたいと思う。
スピンオフ:猫のウンチに困っている話。
マダニ は街中の植え込みや公園にも生息している
マダニは小さくても、油断ならない存在だ。
マダニとは動物や人の血を吸って生きる外部寄生性のダニの一種で、特に春から秋にかけて活発に活動。体長は3〜8mmほどで、吸血後は10mm以上に膨れ上がることもある。
マダニの特徴
- 節足動物の一種で、クモやサソリの仲間
- クモ綱に属し、脚は8本。草むらや落ち葉の下、動物の通り道などに潜んでいる。要チェック
- 吸血の方法が特殊
- 皮膚に口器を突き刺し、セメントのような物質で固定して数日間かけて吸血。このとき唾液を通じてウイルスや細菌を媒介することがあるため感染症のリスクがある。
- 媒介する主な感染症
- 日本紅斑熱、ライム病、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)など。特にSFTSは致死率が高く、近年報告が増えている。 要チェック
野良猫はマダニの寄生リスクが高い
マダニ は山林だけでなく、公園・道路沿いの植え込み・空き地・庭先など、都市部の緑地にも生息しており、野良猫がそうした場所を通ることで寄生されることがある。
実際、アメリカの調査では野良猫の約18.7%にマダニの寄生が確認されたという報告もあり、外を自由に歩く猫にとっては決して珍しいことではないとのこと。
つまり、街中の野良猫もマダニのリスクを抱えており、むやみに触れたり抱き上げたりすることは避けたほうが安全。
マダニ の危険:触れた場合は感染症に罹るリスクがある
マダニ が危険視される最大の理由は、致死率の高い「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」ウイルスを媒介するから。
SFTSとは?
SFTSはウイルス性の感染症で、主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺されることで感染。
初期症状は発熱・倦怠感・嘔吐・下痢・頭痛など風邪や夏バテに似ているため、「タダの体調不良」と見逃されやすいのが特徴。
発症から数日で血小板や白血球の急激な減少、肝機能障害、多臓器不全に進行することがあり、致死率は10〜30%と非常に高い。
最近の国内事例
- 2025年6月、愛知県豊田市で2人がSFTSで死亡したことが報道され、改めてマダニの危険性が注目。
- 感染した猫を診察した獣医師がSFTSを発症して死亡した例もあり、マダニ→動物→人という間接的な感染経路も問題視されている。
マダニ から子どもを守る
子どもは地面に近い位置で遊ぶため、草むらに潜むマダニとの接触するリスクは大人よりも高いのは事実。
マダニ に噛まれないように・噛まれても直ぐに気づくように対策する
- 公園や草むらでは長袖・長ズボン・帽子を着用
- 虫よけスプレー(イカリジンやDEET)を衣類にも使用
- 帰宅後は外で何をして遊んだかを尋ねる
- 必要ならば着替え・シャワーを浴びるなどでマダニの駆除
- 噛まれていないかをチェック(耳の裏・頭皮・脇の下などはマダニがついても気づきにくい)
マダニに噛まれたら数日~二週間は経過を要チェック
マダニは吸血の際に麻酔作用のある唾液を注入するため痛みやかゆみを感じにくく、親が子どもにくっついたマダニを発見できるのは「吸血してしばらく経ってから」が実情。
- 吸血後、かまれた部分が赤く腫れたり、硬く盛り上がることで気づく(かゆくないけれど、違和感がある・熱っぽい場合はマダニにかまれた可能性あり)
- 吸血がすすむとマダ二の体は1cmに近くまで膨らむため、これで気づく人が多い
- 皮膚にマダニがくっついている場合は無理に引き抜かず医療機関で除去
マダニに噛まれたこと自体はすぐに命に関わるものではないが、そこから数日〜2週間以内に発熱や全身症状が出た場合には、重大な感染症サインかもしれない。
噛まれた後に以下の症状がある場合はすみやかに医療機関を受診。その際は、マダニに噛まれたことを医師に報告(可能性も含めて)。
- 38℃以上の発熱
- 倦怠感(だるさ)
- 食欲低下
- 意識がぼんやりする、けいれん ←救急車レベル
【まとめ】 マダニ は必要以上に恐れる必要はないが、猫と距離をとってリスクを犯さないことも大切
マダニ とは恐ろしい存在であるが、それを過剰に怖れていては息が詰まる。
噛まれないように対策をしつつ、噛まれても慌てずにいられるだけの知識を身につけたい。
それだけで日々はぐっと穏やかになる。
子猫を触りたいという子どもの欲求は止められない。
これを危険だと言って怖がらせるのではなく、“子猫にとっては人間は大きな存在だから怖がらせてしまう”と教えて適切な距離を自らとらせるのも一つの守り方だと私は思う。
行動を制限するのではなく、理解を通してバランスを取りたい。
その匙加減こそが、自然やいのちとのかかわり方を育てていくのだと思う。
そしてそれは、親である私たちが、子どもたちと一緒に学んでいけることでもある。
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