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ハロウィン はなぜ「かわいい」になったのか? 日本人の精霊信仰と文化変換

ただのひとりごと
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日本人が考える「 ハロウィン 」から連想されるものは――。

  • かぼちゃ 76.4%
  • お化け 55.3%
  • 仮装・お菓子 約50%
  • 海外の行事・子どものイベント・季節行事 約10%

子どもたちのおやつのお菓子のパッケージがハロウィン仕様になるくらいで特に何かする予定はない。
これは多数派。

ハロウィンに何かする予定がある人は少数派で「特に何もしない」が70%以上、自分は参加しないが「世間が盛り上がるもの」と認識している人が53%。季節のイベントとして認識されるものの『他人事』なのが ハロウィン

なぜ日本ではハロウィンが“他人事”として定着したのか?
その答えは、精霊に対する考え方の違いにあると思われる。

ハロウィン は何か?

ハロウィン とは「諸聖人の日の前夜」という意味

ハロウィンはカトリック教会が祝う「諸聖人の日の前夜」。
諸聖人(Hallows)の前夜(eve)が訛って「Halloween」になったという説がある。

ハロウィンはアイルランドを中心としたケルト民族、古代ケルト人のドルイド信仰が起源。

アイルランドの古い伝記では「諸聖人の日(11月1日)」は諸聖人たちと殉職者を記念する日。
古代ケルトではこの日が1年の始まりとされていた。

ハロウィン には死者の霊が家族のもとに来る

ハロウィンには死者の霊が家族のもとに来ると信じられている。

死者の霊、つまりご先祖様が家族の元に戻ってくるのは日本のお盆と同じ。
しかし、日本のように死者の霊を歓迎しない。

ドルイド信仰では霊は基本的に悪いもの(悪霊)と考えている
さらにハロウィンにはこの世と霊界を隔てる扉が開かれ、悪い精霊たちも一緒にやってくると考えられている。

だから歓迎しない。

ハロウィンでは悪霊や悪い精霊から身を守るため、悪霊に似せた仮面をかぶって擬態する。
これが仮装の由来となっている。

ハロウィン になぜランタンを飾る?

ハロウィンでは悪いものから身を守るために供物をささげ火を焚き、翌朝この火を司祭たちが人々に配り、人々はそれぞれの家の竈にこの火を灯して悪い精霊(シー)が家の中に入ってくることを防ぐ。

この配られる火がジャック・オ・ランタンの始まりと言われている。

時は流れて人々は採れたカブをくりぬいてランタンを作り、そこに悪い悪霊から身を護る火を灯すようになった。

そう、カブ。

もともとランタンはカブで作られていたが、ハロウィンの発祥地であるアイルランドの人々が大量にアメリカに移り住んだことで『カブのランタン』ではなくアメリカの風土に合わせた『カボチャのランタン』が作られるようになった。

ちなみにハロウィン の定番「ジャック・オ・ランタン」の「ジャック」とは、ランタンをもってあの世を彷徨う男のことあの世をふらふら彷徨う魂の代名詞になっている。

この世にいた頃のジャックは「悪魔よりも悪魔らしい」と言える。

人間だったジャックは悪魔に魂と引き換えに酒代を要求。
願いを叶えたので魂を要求しにきた悪魔をジャックは捕まえ、今後10年は魂を取りにこないことを約束させる。

10年後、魂の要求をしにきた悪魔に「今度こそ魂あげるから」といってリンゴを要求。
リンゴの木に登った悪魔を捕まえ、苦しむ悪魔に自分の魂をとらないことを約束させる。

こんなジャック、死後に地獄行きになった。
しかし悪魔から「魂は取れない約束になっている」と言われて地獄にも行くことができない。

結果、ジャックはあの世のどこにも行けず、提灯をもってあの世を彷徨う魂になった。

ハロウィン がしっくりこないのは『精霊』のせい?

日本の宗教観・文化の根底には精霊信仰が強く根付いている。

「精霊信仰」とは山・川・木・岩・風・火・動物など、あらゆる自然物に“霊”が宿っていると信じる考え方で、『宗教』として体系化される前の『原始的な自然崇拝(アニミズム:animism)』の一種。

日本ではこの精霊信仰が神道の基礎になった。

神道は特定の神を信じる一神教ではなく『八百万の神』を尊ぶ信仰。
八百万(やおよろず)とは数えきれない神々のこと、つまり自然の中の精霊や力のことを指している。

ハロウィンの起源である古代ケルトのドルイド信仰も、非常に近い性質を持っている。
彼らも自然界に精霊が宿ると考え、火・森・太陽・死者の霊などを敬っていた。

しかし、日本と西洋(特にケルト文化)では精霊観が根本的に違う

日本では人間も自然の一部、精霊との境界が希薄

日本の場合は精霊を敬う。

精霊が悪さをすることはあってもそれは人間のせい、人間が礼を欠いたり自然や物を粗末に扱った結果であると考えることが多い。

神楽という言葉があるように「神を楽しませる」「神をもてなす」という感覚が根本にある。

ヨーロッパでは精霊は別世界の住人

一方、ケルトをはじめとするヨーロッパの精霊(シー / Sidhe)は人間とは異なる世界の存在。
「こちらの世界に干渉してくる者」として恐れられる。

彼らは人間と感情や道徳を共有しないため、「悪意」ではなくても結果的に人間に害を及ぼす。

ドルイド信仰において精霊は誇り高く、気まぐれで、人間を見下す傾向がある。
だからケルトの人々はハロウィン(サウィン祭)の夜に供物を置いてシーの怒りを鎮めるようになった

ハロウィン の市場規模

こんな日本でも ハロウィン の市場規模は大きい。

コロナ前(2019年)の市場規模は約1,300億円でバレンタインを超える規模と話題になった。
コロナ禍は自粛ムードで1000億円未満だったが、コロナ後(2024年)はイベント復活で市場規模はコロナ前を超える約1,800億円。

今年(2025年)は物価高騰が騒がれ、ハロウィンに参加する人が減ると見込まれつつも平均支出は増加傾向にあるため市場規模(見込み)は規模は約1,673億円。

ハロウィン は今では私の子どもの頃のハロウィンは「知る人ぞ知るイベント」でしたが、いつの間にかハロウィ

専門家によるとハロウィンが1000億円規模の市場を維持し続けていくには「家族や友人と仮装やパーティーで楽しむ日」というだけではなく、この日だからこその理由づけと意味づけ、そしてギフト市場を開拓する必要があるとのこと。

「 ハロウィン ⁼かわいい」で文化変換

日本におけるハロウィンは本来の「死者と悪霊の夜」ではなく、「かぼちゃ・仮装・オレンジと黒のかわいいデザインの日」に変換されている。この“かわいくする力”こそが、日本文化の強み。

日本では、古くから“恐ろしいもの”を“身近で愛すべきもの”に変換してきた。

  • 妖怪 → ゆるキャラ
  • お地蔵様 → 優しい子どもの守護者
  • 鬼 → 鬼滅の刃で「悲しみを背負う存在」

日本人は“畏怖すべき存在”を“親しみを込めて受け入れる”文化をもっている。
つまりシーでも「悪霊」と排除せずに“キャラ化”することで恐怖を和らげ、楽しむ対象にしてしまう。

  • 黒猫 → 幸運の象徴に
  • お化け → デフォルメされてポップに
  • カボチャ → 顔をつけてマスコットに

つまり「かわいい」は、日本的に『受け入れられること』であり、消費文化との親和性が極めて高い

  • 「かわいい」は年齢・性別を超えて共有できる価値観
  • ギフト化・キャラクター化が容易
  • ハロウィン限定パッケージ、コラボ、テーマスイーツなどに展開可能

日本では、宗教的な背景よりも「かわいい・楽しい・写真映え」が祭りを動かす最大のモチベーションになっている。ハロウィン市場が巨大化したのは、この“かわいい⁼参加しやすい宗教なき信仰”が受け入れられたから。

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