第3話 「永琉さん、君に謝りたいんだ」 「お帰りなさいませ、お義父様」伸二が家に帰ると永琉が出迎えてくれたが、永琉に対する気まずさで返事が一拍遅れた。「……ああ、ただいま」視線を逸らして短い挨拶、そして小さな咳払い。伸二は足早にその場をあとにし、逃げるように自分の部屋に入る。ケホ... 2025.09.19
第2話 「永琉、君に言いたいことがあるんだ」 永琉との婚約話は、一真自身が望んで壊した。愛琉への恋心を自覚した一真は十和に婚約は愛琉としたいと何度も訴えたが、十和を筆頭に親族に反対され続けた。それが悔しくて一真は永琉と会うときは愛琉とも会いたいと永琉に言った。(愛琉だって一緒に遊びたい... 2025.09.19
第1話 「永琉、君はどこにいる?」 身支度を整えて一真が一階のダイニングに入ると、いつも通り定位置に両親が座っていた。「おはよう、一真」「おはよう。父さんも、おはよう」「……ああ」五人掛けのテーブル。上座である家長の席に父親の伸二が座り、その右に母親の十和。そして十和の向かい... 2025.09.19
プロローグ 「なんで、永琉(えいる)が?」花嫁の控室に入ってきて足を止め、永琉を指さすのは高松 一真(かずま)。永琉の四歳上の幼馴染で、永琉の生まれた老舗和菓子や『白梅庵』と長く付き合いのある老舗百貨店『松花堂』の跡取り息子。まだスーツ姿だが今日の花婿... 2025.09.18