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『 アニメ産業レポート 』が示す成長戦略と課題。アニメ産業は自動車産業に並ぶのか?

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2025年の「 アニメ産業レポート 」が2025年12月上旬に刊行されることを一般社団法人日本動画協会(AJA)が発表した。

アニメ産業レポート とは?

「 アニメ産業レポート 」は日本動画協会が毎年発行する日本のアニメ業界全体の動向をまとめた白書。

アニメ産業の実態を把握し、業界内外に向けて情報発信することを目的とし、市場規模、収益構造、海外展開、制作現場の課題などを網羅的に分析している。

アニメ産業レポート |最新版(2024年)の注目ポイント

  • 市場規模は3兆3,465億円(前年比114.3%)で過去最高を更新
  • 海外市場が国内市場を2年連続で上回る(海外:1兆7,222億円/国内:1兆6,243億円)
  • 制作会社の売上は4,272億円(前年比125.4%)と急成長
  • テレビアニメの深夜枠(23時台)が定着しつつある
  • 制作現場では人材不足と制作コストの上昇が深刻化

アニメ産業レポート |活用される場面

  • 政策立案や業界支援の資料(経産省・内閣官房など)
  • 企業の投資判断や市場分析
  • メディアや研究者による論考の基礎資料
  • アニメ関連イベントやセミナーでの議論材料

政府はアニメ産業を「成長分野」と位置づけ、2033年までに海外売上20兆円規模を目指すという長期目標を掲げている。「海外売上20兆円」は2025年の自動車産業の海外売上と同等。アニメ産業を自動車産業の輸出規模にしようという野心的な目標である。

アニメ産業は少人数で高付加価値を生むことは可能。

2024年のアニメ産業の雇用者数推定7万人で海外売上1.7兆円に対し、自動車産業の雇用者数は約550万人で海外売上が約20兆円。1人あたりの売上額を基準にして単純計算すると約90万人で20兆円規模に到達可能とも言える。

しかし、自動車産業と違いアニメ産業は人手に比例して売上が伸びるという計算はできない。アニメ業界の成長にはヒットする作品、国際展開、制作体制の強化など複合的な要因が必要となり、制度的支援や技術革新も不可欠である。

政府によるアニメ産業支援の主な取り組み

経済産業省が中心となり補助金や政策提言を通じて業界の持続可能な成長を後押ししている。

  1. 制作資金・設備への補助
    • 制作会社やスタジオに対して、制作費や設備投資への補助金を交付。
    • 長期制作に対応する「基金型支援」の導入(安定的な資金確保を支援)。
  2. 海外展開支援
    • JETRO(日本貿易振興機構)と連携し、米国・タイ・インドなどに支援拠点を設置
    • 翻訳・字幕・ローカライズ費用の補助、海外見本市への出展支援などを実施。
  3. クリエイター人材の育成と待遇改善
    • 若手アニメーターやエンタメスタートアップに対する育成支援。
    • 「エンタメ・スタートアップ支援:創風」などの事業で、新たなIP創出を促進
  4. 海賊版対策と知的財産保護
    • 海外の海賊版サイトに対する摘発支援や国際連携を強化。
    • 特にベトナムや欧州を重点地域として、損害の大きい地域に対する対策を重点化
  5. 政策提言と制度整備
    • 経団連や経済同友会と連携し、アニメ制作現場の労働環境改善や競争力強化に向けた提言を発表。
    • 制作現場の人材不足や資金調達の課題に対して、官民連携による制度設計が進行中

まとめ

アニメは今や、“文化”から“産業”へ。

2024年の市場規模は3.3兆円を突破し、海外売上が国内を上回る構造が定着しつつある。
日本政府は2033年に海外売上20兆円という、自動車産業と肩を並べる目標を掲げた。

しかし、アニメ産業は機械ではなく、人が作る創造産業。
人材育成、現場の待遇改善、国際展開、海賊版対策――そのすべてが揃って、初めて成長は持続する。

『アニメ産業レポート』は数字の白書ではなく、未来に向けた航路図である。
日本のアニメが世界の物語を作り続けるために、何が必要なのか。

その答えは、これからの数年にある。

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