2025年7月に行われた 参院選 の結果をまとめてみる。
与党の過半数割れ。
新勢力の躍進。
そして注目されたのが「今まで政治に関心が薄かった層」の投票参加。
SNSを情報源とし、リアルな生活課題に敏感で、政党やイデオロギーよりも「自分の言葉で語る候補者」に惹かれるこの新しい有権層がどんな価値観を求め、どんな政治を選んだかが浮き彫りになった。
参院選 |選挙結果の概要
- 与党(自民・公明)は過半数割れ
- 自民党:39議席(過去3番目の少なさ)
- 公明党:8議席(過去最低)
- 衆院に続き参院でも過半数を失ったことで、政権運営はより困難に。法案成立には他党との協力が不可欠となり、連立再編や政策調整の動きが加速する可能性があります。
- 地方での支持低下が顕著。東北・四国・九州などで議席を減らしたことは、地域政策の見直しを迫る材料となりそうです。
- 石破首相は続投を表明
- 「国家に対する責任」として政権維持の意向を示す
- 党内では退陣論も浮上
- 野党の躍進
- 国民民主党:4議席→17議席
- 参政党:1議席→14議席
- 両党ともに単独で法案提出が可能な議席数を確保。特に参政党は「日本人ファースト」など独自路線で支持を広げ、今後の連立交渉や政策形成に影響力を持つ存在へと成長しています。
- 支持者の4割が40代、50代の就職氷河期世代
- 投票率は約58%と前回(52.05%)を上回る
- 期日前投票も過去最多の2618万人
- 全世代で投票率が上昇し、特に40代の伸びが顕著(+3.8pt)
- 若年層(10〜30代)も微増傾向で、政治参加の意識がじわりと広がっている
年代 | 2022年投票率 | 2025年投票率 | 増減 |
---|---|---|---|
10代(18〜19歳) | 約38.5% | 約41.2% | +2.7pt |
20代 | 約42.3% | 約44.7% | +2.4pt |
30代 | 約49.8% | 約52.3% | +2.5pt |
40代 | 約55.1% | 約58.9% | +3.8pt |
50代 | 約61.2% | 約64.1% | +2.9pt |
60代 | 約69.8% | 約71.5% | +1.7pt |
70代以上 | 約72.5% | 約74.8% | +2.3pt |
参院選 |50代以下の投票傾向の変化
10~50代の政治参加の意識がじわりと広がっている背景には、SNSや動画を通じた情報発信があると考えられている(投票行動に影響を与えた)。
50代以下の投票傾向は次のように変化している。
- 自民党支持率が10代〜30代で1割台へ低下
- 国民民主党・参政党が若年〜現役世代の支持を広く獲得
- SNSを情報源とする層が66%を超える(テレビ・新聞を上回る)
- 消費税・子育て・個人の生き方など、実生活に直結するテーマが支持の分かれ目に
- 政治に対する関心が、「誰を信じられるか」から「自分の暮らしに関係あるか」へと変化
- 候補者の発言よりも行動歴、政党よりも“自分語りの力”を重視
価値観 | 内容 (50代以下が反映した価値観) |
---|---|
生活実感主義 | 抽象的理念より、光熱費・育児・仕事環境への直結を重視 |
感情可視化政治 | 怒り・不安・希望といった“心の動き”を代弁する政治への共感 |
共感・共振型民主主義 | 上からの説得ではなく、横並びで語り合う感覚への信頼 |
自己決定感志向 | 政策を「押し付けられるもの」でなく「選び取るもの」として捉える |
参院選 |30~50代の子育て世代を動かしたもの
「理想」より「現実」。
教育費・働き方・物価高──暮らしに効く政策を掲げた政党が子育て世代を動かした。
※政党別支持傾向については、比例代表・世論調査からの推定込み。
40代が支持した政党TOP3の子育て政策
参政党は「教育給付金」「子育て減税」などが40代の支持を集めた要因と分析されている。
第1位 参政党(支持率 約19.3%)
- 子ども1人あたり月10万円の教育給付金
- 第3子以降は非課税世帯化
- 道徳教育の重視
第2位 自民党(支持率 約16.1%)
- 高校授業料の実質無償化
- 中間所得層への高等教育支援
- 「出世払い型」奨学金制度導入
第3位 国民民主党(支持率 約12.5%)
- 高校までの教育費完全無償化(給食・教材・修学旅行含む)
- 所得制限撤廃
- 教育国債発行
40代が支持した政党TOP3の子育て以外の政策
第1位 参政党(支持率 約19.3%)
- 消費税の廃止を掲げ、可処分所得の増加を目指す
- 農業の自給自足推進/自然医療・食育の強化
- 社会保険制度の再設計による負担軽減と世代間格差の是正
現役世代の「税負担」や「生活コスト」に直結する政策が多く、40代の家計感覚に響いたと分析されている。
第2位 自民党(支持率 約16.1%)
- 非課税世帯・子育て家庭に最大4万円の現金給付
- 名目3%・実質1%の賃上げ目標/所得平均+100万円構想
- 原発再稼働+次世代革新炉の推進で電力安定化
物価高対策としての即効性ある支援策が評価され、特に「現金給付」と「賃上げ」が40代の支持につながったと見られている。
第3位 国民民主党(支持率 約12.5%)
- 所得税・住民税の基礎控除引き上げによる実質減税
- ガソリン税の暫定税率の廃止で燃料費負担を軽減(2026年3月予定)
- 社会保険料の見直しで現役世代の負担軽減を提案
通勤・生活コストの軽減策が多く、40代の「働く世代」としての視点に合致した政策が支持を集めた。
参院選 の結果から見る、今後の政治の“予兆”
いまの10代・20代が子育て世代に、子育て世代は現役世代ではなくなる20年後をイメージするのに、今回の参院選の結果はどう影響すると思う?

今回の選挙結果を「時代の予兆」としてとらえるなら、20年後の政治は生活感覚と共感性に根ざした“市民主導型の政治”へと形を変えていく可能性があります。
1. 暮らし直結型の政策
消費税廃止、教育無償化、社会保険見直し──具体的な生活対策が支持されたことから、20年後は「経済成長」より「生活の安心」が政治の正統性を決める軸となるかもしれない。
2. “自分語り”の政治文化の定着
政党の理念より候補者個人がどう語り、どう行動したかが評価されていた今回の傾向から、20年後には「市民と等身大の政治家」や「経験があるリーダー」が求められる土壌が育っているかもしれない。
3. 情報接触・政治参加の方法が根本から変化
若年層がSNS・動画を通じて政治を知り、共感した内容で投票していた今回の傾向から、20年後の政治は「デジタル空間とリアルな暮らしが交差する民主主義」に進化し、投票そのものもバーチャル空間や参加型シミュレーションになる可能性もある。
4. “共感型民主主義”へのシフト
上からの政策ではなく、横並びの声が尊重された今回の傾向から、20年後には多様な価値観が混ざり合う「対話前提の政治」へシフトし、市民が政治を語る言葉が増え、判断基準も「理論」ではなく「実感」がベースになるかもしれない。
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